Southeast Asian Studies Group

Merchants of Banten depicted in Willem Lodewijcksz, Premier livre de l'histoire de la navigation aux Indes orientales, par les Hollandois, et des choses a eux advenues (Amsterdam: Cornille Nicolas, 1609).

Research Themes

A Study of Historical Travelogues on Late Early Modern Southeast Asia

Research Outline

東洋文庫は、東西交流史をめぐる貴重な文献史料を多数有する。これらの文献は、アジア諸地域の社会や地域間交流を検討するための重要なデータであり、研究活動に欠かせない。東西海洋交通路の要衝に位置する東南アジアには、近世後期(16~19世紀前半)に周辺世界から多数の来訪者があり、彼らが記した様々な旅行記が東洋文庫に収蔵されている。そうした記録は、広域世界と地域社会の関係を検討する上で貴重なデータとなり、近世東南アジア社会を近現代と比較するためにも重要である。本研究テーマは、以下のような具体的な計画のもとに進行させる。

  • (1)定期的に研究会を開催し、東南アジアをめぐる近世後期の旅行記史料を輪読し、来訪者を迎えた港市、外来者と現地人の交流、交易活動に着目しつつ、港市の形成する広域ネットワークと地域社会のあり方を考察する。またこうした作業をもとに、その後の近現代東南アジアを展望し、その変容過程を検討する。そうした作業を進めつつ、インドネシア国立図書館、インドネシア学術研究院、シンガポール国立図書館、マレーシア国立図書館、タイ国立図書館、ハノイの極東学院、ハンノム研究院、厦門大学東南アジア研究所などの諸機関と情報交換をはかる。
  • (2)研究会で輪読するそれぞれの旅行記史料から、その内容(旅行者の出身地、訪れた場所、時期、特筆するべき記述など)を概観した史料研究データベースを作成する。また2023年度までに作成した旅行記史料のデータベースの内容との類似点や差異を検討し、新たなデータベースに反映する。さらにこうしたデータベース公開の可能性を検討する。また2021年度から開始した、1930年代の中部ジャワの華人が残した集豊(Tjiep Hong [Qiep Hongとも表記される])文書の整理とカタログ化を進める。
  • (3)研究会の活動をとおして得られた研究成果は、東洋文庫の定期刊行物『東洋学報』や英文紀要(Memoirs)、Asian Research Trends さらには英文叢書(Toyo Bunko Research Library)などの出版物に適宜掲載する。また研究班の検討テーマあるいは上記集豊文書など現地華人の残した資料をめぐる、国際シンポジウム開催の可能性を検討し、(1)の関係機関の研究者も招き、研究の国際交流を推進する。
  • (4)若手研究者に研究会に参加してもらう。また若手研究者の報告を奨励し、その成果を上記の出版物に掲載する。