『テルジュマン(翻訳者)』バフチサライ、1883-1918年
研究テーマ
中央ユーラシア近現代史資料の収集と研究
研究概要
1991年のソ連解体から30年あまりが過ぎた現在、旧ソ連地域に包摂されていた中央ユーラシアの近現代史研究は、世界的に見て着実な進展を見せている。その背景には、長くアクセスすることができなかった現地所蔵資料の利用が可能になったことがある。日本においても各国の国立文書館などに所蔵されるアーカイヴ資料を活用した独創性の高い研究が次々と発表されている。ただし、国内における中央ユーラシア近現代史関係の資料状況はなお貧弱であり、資料を所蔵する大学の図書館や研究室の数も限られている。一方、多くの資料は個々の研究者のもとに蓄積されているが、これはいかに貴重な資料であっても時の経過とともに散逸する可能性が高い。次世代研究者の育成という観点からすると、このような資料状況は早急に改善する必要がある。こうしたなかで、中央ユーラシア史に関する基礎資料を集積してきた東洋文庫の果たす役割は大きい。
そこで本研究では東洋文庫を拠点として中央ユーラシア近現代史資料、とりわけ19世紀末から20世紀初頭にかけて中央ユーラシア各地で刊行された現地語による新聞・雑誌の収集と研究をめざす。これらの定期刊行物は同時代の政治・社会・経済・文化について豊かな情報を提供し、アーカイヴ資料と双璧をなす貴重な資料群といえる。近年、ウズベキスタンやトルコなどでもこれらの資料への関心が高まっており、注目すべき研究も次々と現れている。ここには国際的な共同研究の可能性が大きく開かれており、資料の共有化には大きな意義がある。国内外の研究者・研究機関の協力を得て収集された資料は、すべてデジタル化し、共有できるように整備する。これは将来的にアジア資料研究データベースの一部をなすはずであり、また東洋文庫の進める資料の恒久的な保存の対象ともなる。これと合わせて2019年に開始した定期刊行物の講読研究会を継続し、若手研究者の参加を広くよびかけたい。なお、研究成果発信の一環として、2023年度末には東洋文庫アカデミアで「中央アジアの新聞・雑誌を読む」と題する講座(全4回)を開講した。
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