中央アジア研究班

Catalogue of the Old Uyghur Manuscripts and Blockprints in the Serindia Collection of the Institute of Oriental Manuscripts, RAS, Volume 1  表紙

研究テーマ

中央ユーラシアにおける非漢字諸語文献の研究

研究概要

 内陸アジアは、有史以来、ユーラシア東西および南北の諸文明・諸文化が行き交い、また融合・定着するなかで独自の文化圏を形成してきた。このいわゆるシルクロード地域を彩った文化的遺産ともいえる諸文字・諸言語のうち、本研究班は漢字・漢文以外のものを主な対象とする。同時に現代における多様な現地語による出版物のもつ歴史文化的な役割の重要性にも注目して、中央ユーラシアにおける文字・言語文化の比較研究をおこなう。時代を問わないこれら基礎文献のカタログ化、データベース化にあたっては、文字ごとに、国際的にスタンダードな表記法の開拓に参画しつつ、東洋文庫におけるその実用化に寄与する。

 本研究班は、東洋文庫の内陸アジア研究部門の他の中央アジア研究班(氣賀澤班、小松班)と協力関係に立ち、またチベット研究班の助力をときに求めながら、原資料の整理・読解とそれにもとづく個別基礎研究をおこなう。なお、広い見地から国際共同研究ネットワークを形成しつつ、より高い水準における実質的な国際協同を推進する。

  • ①東洋文庫は、ロシア・サンクトペテルスブルグのIOM(Institute of Oriental Manuscripts)所蔵古文献のマイクロフィルムを所有するが、その古ウイグル語文献に関する研究データを基にカタログ第1冊をIOMとの国際共同出版として東洋文庫から2021年に上梓した。しかしIOMの編集体制変更によりその後の作業は停止している。この復活を期待して下準備を継続する。
  • ②現在でも古文献が発掘される有力地域、中国のトルファン博物館には未公開のウイグル等、非漢文古文献があり、基礎的研究作業は個人レベルから発した国際的な共同作業により、2010年までに一段落している。その後中断している現地博物館当局その他の関係者との再接触を試み、その公開に向けて具体化を図り、また資料の比較研究を進める。
  • ③モンゴル国では古代突厥文字による碑文の調査・保護・研究が各種国際共同作業で進んでいる。それらの価値は碑文研究によって支えられる。すでに20年を超えて継続している「突厥碑文研究会」を組み込み、若手研究者の育成を図りながら、網羅的な先行研究の総括と最新情報の取得を海外研究者の参加のもとで進め、碑文の新しい日本語訳の作成と公表を目指す。
  • ④中国の新疆ウイグル自治区を中心として出版される現代ウイグル語書籍・雑誌等の出版事情は、言語・文字政策の影響を受けて変遷を重ねているため、そのコレクションが将来においては歴史的な価値を持つことになる。日本では東洋文庫のコレクションが主要なものであるが、これをさらに充実すべく収書、整理をおこない、カタログ作成を準備する。

研究班メンバー