東北アジア研究班

『壇廟祭祀節次』

研究テーマ

清代中国諸領域の構造分析:政治経済・祭祀儀礼・文化

研究概要

 中国では内外政治・経済・民族を中心とする国家事業を急進させるなか、長期間に亙って内在していた政治・経済・民族・文化をめぐる様々な課題と向き合うことになった。「一帯一路」や「中華民族」等に象徴される一連の政策にはそのことが端的に反映されており、影響はモンゴル・チベット・ウイグルをめぐる自治区の問題から広く中央アジア・北アジア領域世界にも及んでいる。その歴史的端緒は、清朝における「天朝としての正統性」の問題・「北京京師体制」の問題・「藩部」政策の問題に求められる。清朝は「天朝としての正統性」に対応する政策や「北京京師体制」と「藩部」政策を拡充させることで、清朝における政治・経済・社会構造としての特徴と清代諸領域における歴史的構造としての特徴を確立し、政治・社会経済・民族文化の問題としてさまざまな展開をみせてきた。そこには、モンゴル帝国の体制と古代からの中国文化・制度を継承しながら、北京を中心とする中国内地の諸領域世界とその周辺に連なる諸領域世界との一体化を進展させた清朝の最大版図が直接に現代中国と繋がるなか、その一体化から生じた政治・社会経済・民族文化の問題もまた現代中国に直結していた反映と捉えられる特徴にかかわる未解決の問題が多々窺える。こうした問題を検証し解明するためには、中国を含むユーラシア各地域の言語文献資料類を保存することでは世界屈指である東洋文庫の所蔵文献類の活用が必須の条件であると同時に、世界史の変遷を背景にアジア・ユーラシア諸地域の史的問題や特徴を独自に検討している東洋文庫の研究活動による成果との連携が不可欠であり、こうした視点からの研究活動によって全く新しい研究成果を生むことができる。本研究班では、清朝の国家領域構造と対外関係の問題にかかわる文献資料類を総合的に研究・分析してきた。これまでの成果に鑑み、東洋文庫が独自に所蔵保存する清朝の官撰文献類や檔案類の解読作業が不可欠かつ急務であると判断し、昨今の国際社会状況を踏まえ、引き続き、東洋文庫所蔵の「清朝祭祀儀礼」資料の解読作業を進めると共に、解読作業が最終段階に入っている部分については引き続き、順次、和文訳注本に反映させる。また清代東アジア・北アジア諸領域における歴史的構造の全容を歴史の時間軸から総合的に捉える研究体制を構築するべく、清朝の儀礼・祭祀・政治・社会経済・民族文化について、継承と改革の展開に関する諸問題を分析する上で特に不可欠となる東洋文庫所蔵の官撰文献類や檔案類を体系的に解読し、その成果をデジタル化し、向後の研究に広く貢献したい。

 基礎資料研究と研究データベースについては社会の現状に鑑み、これまでに収集した資料類のデータ整理と東洋文庫所蔵の資料類の解読研究作業に特化したい。また、国際交流の強化については、社会の現状に鑑み、対面とテレワークの活用を併用したい。若手研究者の育成については、社会の現状に鑑み、これまでと同様な流れのなかでその成果を継続しながら、情報交流の電子化に向けた施策が急務であると判断し、その方策に対する検討を引き続き進めたい。研究成果の刊行と発信の強化については、現在進行中の刊行状態を引き続き継続・強化する。

研究班メンバー