東北アジア研究班

金正浩『大東輿地図』(1861年、木版、東洋文庫蔵)中の漢城(ソウル)城壁内地図

研究テーマ

近世朝鮮研究資料の基盤的データベース構築

研究概要

本研究は、近世(朝鮮時代)を中心としてその前後の時期にも目配りしながら、朝鮮半島において国家権力や各種の公私組織ないし個人により作成された各種の文字・図像資料の現存状況を把握するとともに、個々の資料の成り立ちや性格・特徴などについて文献学的ないし史料学的観点から検討を加え、それらの成果をもとに基盤的なデータベースの構築をめざすものである。さらに、関係する既存のデータベースとも結び付けた近世朝鮮史研究資料に関するポータルサイトの立ち上げも視野に入れたい。

第一の課題は、日本国内の各図書館・研究機関等が所蔵する諸資料の現存状況を確認し、個々の資料の基本的な情報を蒐集・整理することである。戸籍関係資料と成冊帳簿類などの各種公私記録類とについてはすでに一定の整理を終えているが、まだ十分とはいえないところがあるので必要に応じて補充調査をおこなう(2024-26)。また朝鮮本をはじめとする東洋文庫所蔵各種朝鮮関係資料についても1979年刊行の朝鮮本分類目録以降、網羅的な分類整理がなされていない。そこで1979年以降の蒐集資料をも含めた朝鮮関係資料の目録を作成する(2024-26)。また古文書類や写本として伝わる日記・紀行文・回想録、さらには古地図類などについてはこれまで網羅的・総合的調査はおこなわれたことがなかったので、日本国内の各図書館・研究機関等においてこれらの諸資料に対する書誌学的調査を実施し、個々の資料の基本的な情報を蒐集・整理する(2024-26)。これら一連の活動は班員の相互協力と役割分担のもとに進める。また調査に際しては、適宜、大学院生などを帯同し、若手研究者の育成にも配慮する。

第二の課題として、個々の資料やそれらを通じた近世朝鮮の政治・経済・社会等に関する実証研究をおこなう(2024-26)。また第三の課題として、以上の研究活動により得られた情報に基づいて、研究の基盤となるようなデータベースを構築する(2024-26)。なお、韓国ではすでに多くの研究機関において国内外所在の近世朝鮮資料の電子化(画像ないしテキスト)が進んでいる。日本国内でも一部ではあるが電子化が進みつつある。そこで可能であれば、それらも含めた近世朝鮮史研究資料に関するポータルサイトを東洋文庫において立ち上げられるようにしたい。

本研究課題は、全体として近世朝鮮史研究の基盤形成のための研究として位置づけられるものであり、アジア研究図書館としての東洋文庫の趣旨に相応しいものである。現時点では国際シンポジウムやワークショップ等の開催は具体的に計画していないが、韓国の研究機関や研究者とは各班員が日常的な研究交流を実践しており、そうした人的繋がりを利用しながら、韓国の学会等で研究発表をおこなったり先方の研究者を招聘したりすることも、研究の進展とともに適宜考えたい。

研究班メンバー