西アジア研究班

皮紙(ヴェラム)文書 第五文書 モロッコの都市フェスにおけるオリーブ油圧搾所の売買等の契約を記す(1670〜1722年) 74×59センチ

研究テーマ

文書資料のデータベース化にもとづく比較制度研究

研究概要

 イスラーム地域の文書資料(土地台帳・財務帳簿などの行政文書、イスラーム法廷文書、ワクフ文書、契約文書など)およびそのデジタル化データをもとに、社会制度の地域間(アラブ、イラン、トルコ、中央アジア)の比較研究をすすめ、イスラーム地域の社会システムの共通性と異質性、および歴史的変化を明らかにする。日本からの研究発信として、中国や日本社会との比較の視点に留意し、東洋文庫の他の研究班との研究交流をすすめる。

 研究活動としては、ヴェラム文書(モロッコの皮紙契約文書)などイスラーム法廷資料研究を柱とし、比較研究の基盤となる資料のデータベース化(共有化)を進め、人文情報学Digital Humanitiesの研究手法も活用する。国内の文書研究プロジェクト(京都外国語大、京都大、東京外国語大アジア・アフリカ言語文化研究所など)、および海外の研究機関(オランダ・モロッコ研究所NIMAR、トルコIRCICA、ウズベキスタン科学アカデミーなど)や研究者と連携する。

[研究活動:重点項目との関係]

 これまでに、東洋文庫が所蔵するヴェラム文書(モロッコの皮紙契約文書、16-19世紀、15点)のアラビア語テキスト校訂と解題・研究(英文)を刊行し(TBRL15および22)、世界初の当該文書の校訂・研究として、売買や相続などの契約方法、公証人や裁判官の役割などを明らかにした。

  • 1.1 ヴェラム文書総合データベースの構築 アラビア語校訂テキスト、英文解題、注釈、参考文献を関連づけたDBを構築する。(2024~25年度)
  • 1.2 皮紙文書の現地調査(チュニジア、モロッコなど) (2024年度)
  • 1.3 未校訂の東洋文庫所蔵ヴェラム文書(4点、メクネス関係)および木片文書(29点)について、アラビア語校訂のための研究会を開催する。(2024~25年度)
  • 1.4 1.3の研究の成果として、ヴェラム文書校訂・研究(TBRLシリーズ、Part3,電子出版)を公刊する。(2026年度)
  • 1.5 国際研究集会を開催する。(2026年度、現代イスラーム研究班や中央アジア研究班など他班との共催も視野にいれて、テーマを検討する)。
  • 1.6 文書講読・史資料研究の促進 ヴェラム文書講読セミナーを開催し、若手研究者の育成に寄与する(2026年度)。史資料へのアクセス(案内)、文書資料の校訂テキストデータ等を「イスラーム地域研究資料室サイト」に公開し、学生・大学院生などの史資料の研究の促進に寄与する(2024~26年度)。

研究班メンバー