中央アジア研究班

池田温氏寄贈敦煌文書『唐人雑鈔』

研究テーマ

日本所在敦煌・吐魯番文書データベース構築と国際発信

研究概要

  • (1)敦煌・トゥルファン出土の文書・文物に関する研究で数多くの成果を生み出してきたわが国だが、外的・内的な要因により、この分野の研究では中国にトップの座を明け渡して現在に至っている。しかし敦煌・トゥルファン出土の文書・文物に関する研究の重要性は変わっておらず、加えて世界各地に散在するコレクションの全貌がしだいに明らかになると同時に、トゥルファンやその周辺地域からの新たな文書・文物の出土情報ももたらされている。
  • (2)東洋文庫の敦煌文書班(以下、「当研究班」)では戦後、イギリスの大英図書館所蔵スタイン文書の写真版を国内では最初に受け入れ、これを用いた研究をスタートさせて以来、豊かな成果を公刊し、わが国における当該分野の研究の中心を担ってきた。その後、班員による研究発表の場として「内陸アジア出土古文献研究会」が設けられ、その成果は論文集(『敦煌吐魯番出土漢文文書の新研究』、『敦煌・吐魯番文書の世界とその時代』ほか)としてまとめられている。
  • (3)今までの成果を継承してその上に研究データベースの構築や国際共同研究を目ざし、戦前来わが国に持ち込まれてきた敦煌・トゥルファン出土の文書・文物に関する情報やデータを集約・整理するために、「日本所在の敦煌・吐魯番文書の整理と研究、国際発信」を課題として設定した。さらに今後はこれに加えて「データベースの構築」を掲げ、東洋文庫に可能な限りデータを集約して内外の研究に資する予定である。
  • (4)わが国に所在する敦煌・トゥルファン出土の文書・文物に関する情報やデータの集約・整理にあたっては、中堅や若手の研究者を交えた共同研究の形をとり、可能な範囲内で所蔵機関における実見調査を行なう。その過程では、東洋文庫が進める「古文書の紙質調査」にも取り組む。
  • (5)当研究班では近年、「濱田徳海旧蔵敦煌文書」の全容把握と公刊に努めてきたが、これに続いて現在では、当研究班を牽引してきた故・土肥義和氏が世界各地で敦煌・トゥルファン文書を実見した際の記録である「土肥ノート」の整理を進めている。この整理作業は近く完了予定で、そのあかつきには、当該文書の写真と重ねて、データベースとして公開すべく計画中である。
  • (6)当研究班が長く主催・運営してきた「内陸アジア出土古文献研究会」は、敦煌・トゥルファンに限定せず、その名称にあるごとく、広く内陸アジア各地で出土した漢語・漢文の文書を対象とした研究発表の場として再編する。そしてそれをいとぐちとして、関連する諸分野の研究者が交流する場として積極的に活用する予定である。