『水経注疏訳注 穀水篇』表紙
研究テーマ
『水経注』諸注疏の再検討および秦漢時代の簡牘検討
研究概要
本研究グループは、東洋文庫の所蔵する文献を多様、かつ精密に利用して、地域という限られた空間を中心に、中国古代社会の構造を検討することを目的としてきた。近年は2チームに分け、原則月2回の研究会をもっている。双方に属する複数の研究員がおり、いずれも研究員による個別研究ではなく、共同研究というスタイルをとるのが、特色である。
Aチームは、中国古代地域史研究の基礎文献である『水経注』とその諸注疏の再検討を、考古学の諸成果や衛星による地形観察という歴史地理学的方法を援用して、推進している。20年度から取り組んだ『水経注』巻10漳水篇の研究は24年度初めには完了、その成果を24年度に5冊目の訳注として刊行する。24年度からは新たに選んだ水系(巻13漯水篇)に取り組む。また22年度に水経注図データベースを作成して公開したが、それを本研究班の研究成果と結びつけるなど、新しい3年間にはその一層の拡充を図る。
Bチ-ムは近年発見が相次ぐ簡牘史料抜きには戦国秦漢史・中国古代地域史研究は遂行できない状況に鑑み、新出簡牘の精読とそれに関わる研究を推進して来たが、その試みを継続する。具体的には『岳麓書院蔵秦簡(肆)』所収の亡律の講読を行い、他の秦漢時代の諸簡牘との比較を通じて、総合的な中国古代の国家や社会の解明に向けての認識を深める。簡牘統一前の『睡虎地秦簡』や前漢初期の『張家山漢簡』等との比較を通して、『岳麓秦簡』の史料的位置づけを試みる。また律令にみえる郷里社会の実態を探求し、律令の変遷を視点として、秦代の国家の特質についての議論を進めたい。また26年度までに研究成果としての『岳麓秦簡』を主たる史料とした論文集の刊行を目指す。
両チームともに現地調査が重要な意味をもつ。特にAチームのばあい、これまでに扱った水系には必ず現地調査の成果を盛り込むことができた。最近は現地調査が困難な事情が存在するが、新たに開始する新水系の調査が実現できるよう努力したい。Bチ-ムも『岳麓秦簡』の理解を深めるためには現地調査が必要であり、その実現に努める。
A・Bチームともに研究員以外に多数の若手研究者の参加があり、その中から研究職を得た者も少なからず出現している。若手研究者の育成という点では重要な寄与をなしていると考える。もちろんこの方針は新研究年度においても継続して重視する。
両チームに外国人研究者・留学生の研究会参加を歓迎し、実際にその参加を得ている。新研究年度においてもこの方針は継続する。また中国の研究機関・調査期間との連絡を絶やさないように努力する。またAチームは、漳水篇の成果をもとに、中国研究者との合同討論会の開催、Bチ-ムも既述の論文集の刊行に関わる討論会開催を追求したい。
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